クランベリーの収穫風景

畑に水をはり、水に浮いた果実を集める。

クランベリーとは

 ヨーロッパ、北アメリカ両大陸の寒冷地に生育するツルコケモモ科の小果樹であり、アメリカでは品種改良が行われ大規模に栽培されている。果実は鮮紅色に熟し、チェリー大で酸味が強く生食には適さない。一般的にはジュースや料理用ソース、菓子などに利用されており、特にアメリカでは七面鳥料理にかかせない。

日本でも自生するが、栽培されず、野生の利用にとどまっている。古くはアメリカインディアンが生薬として利用していたとも言われているが、現在、アメリカでは一般飲料として広く普及している。民間療法としてはEnterostomal therapist(E.T:人工膀胱、人工肛門の専任治療士)の教育機関として有名なCleveland Clinic (Oh,USA) においても手術の前後にクランベリージュースを飲用させている

尿路感染予防効果の検証

 クランベリージュースの持つ尿路感染の有効性については古くから知られている。1914年、Blatherwickは、クランベリーが尿のミネラル組成に影響して尿を酸性化すると報告している1)。次いで1923年にBlatherwick、Longらはボランティアにクランベリーを摂取させ、尿 pHが6.4 から5.3 に低下し、馬尿酸が600% に増加していることを発見した2)。さらに、 馬尿酸の生成にはキナ酸が関与している可能性を示唆している。1959年にBodel,Cortran,Kassらは尿路感染菌の静菌に馬尿酸が必要であることを発見し3)、1966年にPaps,Brusch,Ceresiaらは泌尿器疾患でクランベリージュースを飲用する場合、毎日16オンスの飲用が必要であると報告した4)。1979年Kinny,Blountらは1日に15〜24オンスのクランベリージュースを飲用させ、尿を酸性化させたが、そのためには多量のジュースの飲用が必要であり、問題があると指摘している5)

 1994年、Avronらは、女性に多い再発性尿路感染症をクランベリージュースで管理できることを報告している6)。この実験はプラセボ群を設定し、尿中の生菌減少効果を臨床的に証明した初めての報告である。

 このようにクランベリーに関する文献は多いが、そのほとんどは1960〜1980に集中しており、クランベリーの機能を明解に解説した報告はない。近年、クランベリーに含まれるプロアントシアニジンが感染菌を尿路上皮に付着させない効果が注目されている。

以下の文献に詳細が記載されています。

 中嶋康彦:クランベリーを用いた治療用食品, 月間フードケミカル,12月号,101-108,1997

 中嶋康彦:クランベリーの機能性, 食品・食品添加物研究誌, 174, 83-88, 1997

 中森 薫、中嶋康彦:クランベリーの有用性とクランベリーパウダー ,ニューフードインダストリー ,42(9)1〜5, 2000

日本で初めてのクランベリーの解説書

 中嶋康彦編 保険同人社 ポリフェノールたっぷりの健康果実「クランベリー」


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 文献

1) Blatherwick, N.R. The specific role of foods in relation to the composition of the urine. Arch Intern Med., 14:409-450, 1914.

2) Blatherwick, N.R. and Long,M.L. Studies of urinary acidity. ll . J. Biol.Chem., 57, 815-818, 1923.

3) Boodel, P.T., Cotran, R.C., Kass, E.H., Cranberry juice and the antibacterial action of hippuric acid. J. Lab. & Clin. Med., 54, 881-888, 1959.

4) Papas,P.N., Brusch, C.A., Ceresia, G.C. Cranberry juice in the treatment of urinary tract infections. Southwestern Med., 47, 17-20, 1966.

5) Kelly, A. B., Blount, M., Effect of cranberry juice on urinary pH. Nursing Res,. 28, 287-290, 1979.

6) Avorn, J., Monane,M., et al., Reduction of bacteriuria and pyuria after ingestion of cranberry juice. J. Am. Med. Associ.,271, 751-754,1994.


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